近年、企業の意思決定や業務効率化においてデータの重要性がますます高まっています。データは「新たな石油」とも言われ、特にAIの発展によりその活用はあらゆるビジネスにとって不可欠なものとなっています。AI活用時代においてはデータを集めること自体がビジネス上の価値にも直結しますし、変化の激しい時代の中でデータを活用することの価値もどんどん高くなっています。
かつては新入社員に求められるスキルとして「コミュニケーション力」が最も重要視されていましたが、現在はデータ分析力がそれを上回るほどの価値を持っています。これはまさに企業がデータに基づいた意思決定を重視する時代へとシフトしていることを示しています。また、会社員もリスキリングとして様々なスキルの習得がしやすい環境になっていますが、その中でもデータ分析力の習得が人気です。
少し前まではデータ分析はWeb系企業やIT系企業など、社内にエンジニアがいるような企業を中心に一部の企業が取り組んでいるような内容でした。しかし、データ活用は今や「一部の専門家だけ」の話ではなくなってきています。
以下のように、非IT系企業においてもデータ分析を担う人材を育成・増強する動きが加速しており、データ活用の内製化を進める企業が増えています。
ここで紹介した企業は大企業であくまで一例ですが、これ以外にも大企業、中小企業、業界などを問わず多くの企業でデータ活用の内製化を進める企業が増えています。それくらい今の時代においてはデータ活用が重要になっているということです。
会社として以下のような事業を左右する大きな判断から日々の業務の中での判断など、データをどう扱うかで意思決定の質と量は大きく変換します。
従って、事業を持続的に成長させるためには会社としてデータ分析力が必須になるのは間違いありません。
ある調査によると、企業がデータ活用を内製化したいと考えている割合は全体の75%にも及びます。これは先ほど紹介したデータ分析の内製化を進める企業が増えている傾向と同じ傾向です。一方で「データ活用人材が育成できていない」という大きな課題があるのも事実です。つまり、「データを活用したいが、それを担う人材が足りない」という状況です。
そもそも「データ分析」とは何でしょうか。私の解釈ではデータ分析とは「データを活用して意思決定を行うこと」です。
ただ単にデータを集計する、可視化をする、だけではなく、「実際にビジネスアクションにつなげる」という点がデータ分析では非常に重要です。
この「意思決定につなげる」というゴールを意識していくと、データ分析とはいくつかのプロセスに分けることができます。
具体的にはデータ分析は以下7つのステップに分けることができます。
1. 課題
2. 仮説
3. 想定
4. 分析
5. 結果
6. 考察
7. 決定
データ分析とは、まず「課題」を明確にして、それに対して「仮説」を立てるところが始まりです。課題や仮説に対してデータによる検証をした時にどんな「想定」アクションが考えられるのかを事前にストーリーとして考えた上で実際の「分析」を行います。分析をした「結果」どのように解釈をしてそこからどんな「考察」をするのか結論をだし、それに対して最終的な意思「決定」をする、というのがデータ分析の流れです。
(詳しくは以下をご確認いただければと思います)
データ分析とは「データを活用して意思決定すること」だと定義し、データ分析でやるべきことを7つのステップに分解すると、データ分析をするために必要なスキルが見えてきます。具体的にはデータ分析をするためには、ビジネススキルとテクニカルスキルの両輪が必要だと考えています。データ分析は総合格闘技とも言われるくらい必要になるスキルは多岐にわたります。
ビジネススキルとは以下のようなスキルで、主に課題を設定したり、仮説を考えたり、データから考察をしたりする際に必要なスキルです。
テクニカルスキルとは以下のようなスキルで、実際にデータを抽出したり可視化したりするために必要なスキルです。
データ分析にはこれらのビジネススキルとテクニカルスキルの両目の習得が必要になります。その中で「ビジネススキル」は大企業を中心に研修などである程度フォローされているような印象です。もちろん特に優れている人やあまりできない人などビジネススキルに関しても個人差はあるものの、ビジネスパーソンであれば日々の仕事の中でも一定レベルは身につけることができる能力だと思います。
特にスキル面の育成で課題だと感じるのは「テクニカルスキル」です。テクニカルスキルは意図的に勉強しないと習得が難しい領域ですし、エンジニアなどの専門的な人しか身につけることができないと思われがちなスキルでもあります。
データ活用の内製化を進めたい企業が多い、しかしデータ活用人材の育成に困っている、こういった課題はこのテクニカルスキルの習得に苦戦しているのではないか、というのが私の仮説です。データ分析に必要なテクニカルスキルを学ぶ環境や仕組みが不十分という現実があるのだと思います。
データ分析に必要なテクニカルスキルをどのように学ぶべきなのか。結論としてこれからデータ分析を学ぶビジネスパーソンにとっては「SQLの学習こそが最短距離」だと考えています。SQLとはデータベースからデータを抽出する際に使うプログラミング言語のようなものです。そのためSQLはエンジニアのような専門知識を持った人しか使えないと思っている人も多いと感じます。
しかし、SQLの学習はそこまで難しくありません。したがってビジネスパーソンであれば誰しもが身につけることができるスキルですし、身につけるべきスキルだと思っています。
ではなぜSQLなのか。理由は以下の3つです。
①データベースやテーブルなどの基礎構造を理解できる
②あらゆる職種で幅広く活用できる
③学習コストが低く、一度覚えると長期で使える
データを扱ううえでデータの概念を理解することは非常に重要です。具体定には「テーブル」と「データベース」についての概念を理解することでデータ分析をするために何が必要でデータ分析で何ができるのかの解像度を上げることができます。簡単にいうとデータベースとは、データを格納する大きな箱です。テーブルとは、行と列によって構成されるデータです。SQLとはStructured Query Languageの略で「データベース上のテーブルに格納されたデー タを取得するときに使う言語」です。これらのデータの基礎を理解しておくことがデータ分析ではとても重要です。
『Garbage In, Garbage Out』という言葉があるように、悪いデータから悪い分析しか得られません。Excelなどを使ってデータ分析もできますが、逆にいうとどんなフォーマットでも分析ができてしまい、必ずしも綺麗な分析ができるとも限りません。SQLで扱えるような行と列で構成されたテーブル形式のデータのほうが汎用性が高く、よりよい分析にもつながります。その観点でもSQLを学ぶ意味、データの基礎的な構造を理解する意味は大きいと思っています。
最近だとこちらの記事にデータベースを使ったデータ管理のメリットが書かれています。
上記にも書かれていますが、簡潔にまとめるとデータベースを使ったデータの管理のメリットは以下の通りです。
スプレッドシートやExcelを使ってもデータ分析は確かにできますが限界があります。ある意味Excelが便利すぎるが故に、データ管理やデー分析、データの可視化などさまざまなことを全てExcelでやろうとする人も少なくない気がします。しかし、上記にもある通り、データを扱う上での基本は、データベース、テーブルで管理をすることです。単純にデータベースやテーブルの基礎を学ぼうとすると技術的な内容ということもあり、なかなか理解することができない場合もあるかも知れません。しかし、SQLの基礎を学ぶことで、データをどう扱うのか、という実際のデータの扱い方を想定したデータの基礎の重要性もより理解ができると思っています。
AIの発展もあり今後はデータ分析もAIがしてくれる、と思われる方も多いかも知れません。確かにAIが自動でデータ分析をするような世界は現実的に起きています。ただ、データの根本的な理解なしでは、正しい質問を投げかけることすら難しくなります。SQLを学ぶことで得られるデータ構造やリレーションシップの理解は、AIに適切な指示を出すための基礎となります。つまりSQLを学びAIもうまく活用しながらデータ分析のスキルを高めていくことが非常に重要だと考えています。
データ分析でSQLを使うことで『シンプル』でかつ『スピーディー』にデータを取得することができます。その結果、意思決定につなげるデータ分析がしやすいというのも大きな特徴です。つまりは営業やカスタマーサポート、マーケターなど、エンジニア以外の職種でもSQLを使うメリットが大きいということです。
シンプルという観点から言えば、意思決定に使うデータは「人が解釈して判断する」という部分が基本になるため、合計・平均・日別集計などの基礎的な集計を行う際には非常に役立つスキルです。もし、あらかじめ決まった数値を定期的に確認するだけであれば、BIツールを使ってスピーディーにデータをチェックできます。しかし、会社の状況やクライアントの要望など、日々変化するビジネス環境の中では、見るべき数値や必要なデータそのものが変わってくる可能性があります。そういったときにSQLが使えると、ちょっとした条件を変更するだけで欲しいデータを素早く取得できるため、意思決定に結びつけやすいです。
また、スピーディーという観点も重要です。SQLを使うと大量のデータを必要なタイミングで 素早く取得できるというところも大きなポイントです。例えば欲しいデータをエンジニアに依頼したり外部ベンダーにお願いすると、それだけでもタイムラグやコミュケーションコストも発生してしまいます。もし自分でSQLが使えれば自分のタイミングで必要なデータの取得ができるためよりスピード感が増します。
最近はデータウェアハウスなど、会社全体で使う大規模なデータベースが構築されるケースも増えています。データウェアハウスに対するアクセス権があれば自分でSQLを使ってデータの取得ができます。「必要なときにデータをサクッと取り出す」スキルがあれば、業務効率や意思決定速度が格段に上がります。
SQLはエンジニアが使うスキルだと思って難しいと感じている人が多いと思います。しかし、データ分析で使うSQLであれば学習難易度はそれほど高くありません。エンジニアが使うSQLはデータ分析だけでなく、アプリケーション開発で使う場合もあります。アプリケーション開発で使うSQLはデータの登録、削除、更新、参照など幅広くSQLの知識が必要です。またそれだけでなくよりデータの処理速度も意識したパフォーマンスチューニングも必須になるため高度な知識が求められる場合はあります。
一方でデータ分析で使うSQLであればそこまで高度な知識は必要としない場合が多いです。具体的にはデータ分析では主にデータの参照(SELECT)を中心に使うため、それ以外のデータの登録、更新、削除などの使用頻度はそこまで高くありません。また処理速度に関しても過度に意識する必要もありません。もちろんデータの更新などのクエリも書けた方がデータ分析においても幅は広がりますし、処理速度を意識したクエリがかけた方が良いことには違いありません。しかしそこは必須というよりはプラスアルファのスキルだと考えると、よりSQLを学ぶハードルは下がります。
また、他のデータ分析で使うテクニカルスキルの代表例として挙げられるのは、SQL・Excel・Pythonなどがあります。これらを比較した時にSQLが最も分析の幅が広く学習効率もよいスキルであると考えています。
その点、SQLは「大規模データもある程度高速に扱える」し、学習コストも低く習得がしやすい特徴があります。
さらにSQLは一度覚えてしまえば、数年先でもずっと活かせるといった強みがあります。
私自身、10年以上前にエンジニアの仕事でSQLを覚えましたが、その時の知識がデータ分析スキルとして今でも現役で使い続けています。
ここまでビジネスパーソンがSQLを学ぶ意味を説明してきましたが、ここからは実例として積極的にSQLの活用をしている企業をご紹介します。SQL活用が文化として根づいている企業として有名なのがメルカリとモノタロウです。
それぞれ、以下簡単に事例を共有します。
こうした事例からも分かるとおり、「SQL=エンジニアだけの言語」という時代ではなくなってきました。 繰り返しになりますが、SQLはエンジニアが使うような難しスキルではなく、ビジネスパーソン誰しもが身につけることができるスキルですし、身につけて損のないスキルであると思っています。
企業がデータ分析の内製化に乗り出すほど、データ分析の重要度は高まっています。
しかし、多くの企業が抱える課題は「人材育成がうまく進まず、思うようにデータを活用しきれない」ことです。
そこでぜひ検討していただきたいのが、SQLを社内で学び始めることです。
SQLはテクニカルスキルとして習得するのは難しいと思っている人も多いかも知れませんが、比較的学習コストが低く実務で使いやすいデータ分析のスキルです。
これからデータ分析の内製化を進めたい企業、データ分析人材を育成したい企業がいればぜひSQLのスキル習得をお勧めします。
もちろんデータ分析に必要なスキルはビジネススキルやテクニカルスキルなど多岐にわたります。SQLだけ習得すればデータ分析ができるようになるとも限りません。
しかし、まずSQLを学ぶことでデータの基礎を理解して、必要なデータを集計するとは具体的に何をやるのかが理解できるとそこからデータ分析の幅は広がります。
また、SQLはBIツールなど他のデータ分析でも使えるスキルになるのためその意味でもまずはSQLを覚えることがデータ分析人材育成のセンターピンであると思っています。
AI時代のビジネスパーソンとして、データに触れるスキルは必須化していきます。
その第一歩として、SQLを学ぶ意味はとても大きいと思います。
もしデータ分析で使うSQLを本気で学びたい方がいれば、私自身も全力でサポートしますのでぜひお気軽にご連絡ください!